「グリム童話」を表現したおもちゃ

2019.08.25

現在、エルツおもちゃ博物で開催中の「森からの贈りもの」展では、「森から生まれたグリム童話」というコーナーがございます。

「赤ずきん」「白雪ひめ」「しらゆきべにばら」「ヘンゼルとグレーテル」「灰かぶり」「ブレーメンの音楽隊」のワンシーンを再現したおもちゃを展示しております。
いずれのお話も「ああ!」と懐かしく感じられる方も多いのではないでしょうか。
もしくは知らないお話でも「どんなお話だろう?」と気になるきっかけになるかもしれません。

『グリム童話集』はドイツ出身のグリム兄弟によって集められた民話集です。
正式には『子どもと家庭のメルヒェン』というタイトルで1812年に刊行、増補・改訂しながら第7版まで出版され、最終的に200話もの物語がここに入りました。
作者も誰かわからない、口伝えのみで人々の間に残ってきたこれだけの話を、兄弟が集めて再話して読まれる形にしたのです!

※上の画像はアーサー・ラッカム画『The FairyTales of the Brothers Grimm グリム童話集』
1909年/Doubleday,Page&Co 刊

兄弟は口伝えの昔話を“文化的遺産”と捉えていました。
目に見える形になっていなかった物語を、彼らが再話して本の形で世に残したことで、多くの画家や作家がまたイラストレーションや絵本に起こし、現代にまで伝わってきたのです。
こうして200年もの時を越え、グリム童話は多くの人に知られていくようになりました。(「グリム童話」は聖書の次に読まれていると言われているそうですよ!)

この役割を果たしてきたのは絵本だけでなく、先に紹介したようなおもちゃにも言えます。
おもちゃが表現している物語のシーンによって物語を思い返したり、そのシーンを知らない人が物語を知るきっかけにもなるのです。
こうした様々な表現形式で物語が長く長く伝えられてきたことを考えると、感慨深いものがあります。

軽井沢絵本の森美術館は開館して最初の企画展が「グリム童話」展でした。
「グリム童話」はドイツで生まれたお話。ドイツつながりでエルツ地方のおもちゃにたどり着き、エルツおもちゃ博物館・軽井沢が作られたいう背景があります。
「グリム童話」は、当館にとってもたいへん偉大な作品なのです。

ムーゼの森 学芸員 中須賀